こんにちは。校條友紀子です。
今回のテーマは定期借家です。
ある大家さんにこんな質問をいただきましたので紹介いたします。
「大家歴1年の新米投資家です。
定期借家って期間満了で退去してもらえるので、
私も大家に有利な定期借家を取り入れたくて勉強中です。
しかし、この契約の普及率が全国でも5%未満だとわかりました。
なぜここまで定期借家が世の中に浸透していないのか不思議です。
不動産業界の実態を教えてください」
という内容です。
内容構成は4つ
1普通借家と定期借家の違い
2定期借家が普及しない理由
3不動産業界の裏側
4大家さんが定期借家を不安なく取り入れる方法
【普通借家と定期借家の違い】
皆さんが賃貸借契約する場合、契約方法は2とおりあります。
1 普通借家
・基本的に契約の更新が可能で期間を2年間としているケースが多い
・大家側からの更新拒絶はまず不可能
・地域によっては更新時に1ケ月分の更新料がかかる
2 定期借家
・契約期間の満了に伴い更新は不可能で契約は終了する
・更新という考えがない 冷たい言い方をすれば期間満了と同時に退去
・お互いの合意があれば再契約が可能
ですから2年で追い出されるのではなくて、
引き続き住みたい&住んでもらいたいとなれば再契約を繰り返すという流れです。
このように比較して断言できることは、
・普通借家=更新すれば永遠に住めるという【借主有利型】
・定期借家=更新がないという【貸主有利型】
なので質問者さんのような
「なぜ貸主にとって有利な定期借家が普及していないのか?」
という疑問が生まれるんでしょうね。
【普及しない理由は2つ】
ずばりめんどくさいからです!!
そしてトラブルになりやすいんです!!
①契約書とは別に説明書面などの規則がたくさんありとにかく面倒なんです。
定期借家契約を締結するには別添書面や説明が必要です。
別途書面は契約書の中に盛り込んで説明すると無効なんです。
別個に独立した書面であることが重要なんです。
法律では「貸主が説明すること」となっていますが、
実務では大家さんが不動産会社に委任して、
定期借家である旨の説明をすることが多いでしょう。
この定期借家の説明を怠るとか、別紙ではなく契約書と一緒にとじ込んで説明しちゃったらどうなると思いますか?
定期借家は無効となり普通借家の契約となってしまうんです。
②次に契約終了の6ヶ月前から1年前の間に借主に対して
「期間満了の通知」が必要です。
万が一この通知を忘れたら退去は当初の予定より6ヶ月先となってしまいます。
つまり、不動産会社の負担がめちゃくちゃ大きいんです。
ケースによっては不動産会社の過失を指摘され、
大家さんや借主に訴えられる可能性もあるんです!
大家さんは期間満了により退去してもらえる契約なのに、不良借主が居座る。
そしてその不良借主が「この定期借家契約は無効だ!」
と主張し訴訟に発展したケースを私は当事者から直接聞きました。
もし、不動産会社がこの複雑な契約作業に落ち度があれば、
損害を賠償しなければならないでしょう。
という理由から、リスク回避のため不動産会社は積極的に勧めないんです。
始めから定期借家を取り扱わない傾向があります。
【不動産業界の裏側】
不動産会社はこのような理由で、大家さんに勧めることはまずありません。
知識に乏しい大家さんは、勧められなければ「定期借家」という
貸主にとって有利な契約があることを知らずに普通借家契約を結ぶんです。
また定期借家となれば、更新料が発生しないので
不動産会社としてもらえるはずの更新事務手数料がとれません。
この更新事務手数料は家賃の半月から1ケ月分を管理会社が
借主と貸主から徴収するのが一般的だと思います。
管理会社の重要な稼ぎ口であった更新事務手数料が入らなくなる
という抵抗もあるでしょう。
大家さんが「定期借家」のメリットを知って、相談したとしても
不動産会社は本音を言いません。本音というのはさきほどお話しした
・面倒だからやりたくない
・トラブルに巻き込まれたくないからやらない
とはまさか言えないでしょう。
ですから建前として
「定期借家だと・・・」
・入居が決まりにくいですよ
・家賃を下げなければ決まりませんよ
・敷金や礼金がとれなくなりますよ
などと理由付けするんです。
私は定期借家を取り扱って10年以上経ちますが、
・定期借家だから家賃を安くしてほしい だとか
・定期借家だから入居を見送ります
という事例は今までゼロです。
【定期借家を取り入れる方法】
では、どういった大家さんが定期借家をやっているのでしょうか?
それは大家さんが勉強を重ねて、不動産会社にお願いしまくって、
やってもらっているケースが大半を占めます。
ですから近道として、大家さん自身、まず少しばかり勉強をして
不動産会社にお願いしまくることです。
「出来る限りの協力しますからなんとか・・・」というお願いスタイルです。
私は不動産管理会社の集まりによく参加をしますが、
定期借家の導入を尋ねると、「積極的に導入している」とか
「経験がある」と答えた不動産会社にまだ出会えていません。
興味すら示してくれません。
だから浸透率は全国で5%未満という実態なんです。
借主に定期借家契約について正しい説明や募集を行い、
安心してもらうことが重要ポイントです。
入居希望者にはこのように説明すると良いでしょう。
「夜中に飲んで大騒ぎするような借主さんには
期間満了で退去していただくので、安心してお住まいいただけますよ。
迷惑行為をしない限り再契約できますので定期借家でも心配ありませんよ。」
このような説明を不動産会社が説明できるか、
そこはしっかりすり合わせする必要があります。
大家さんのがんばり次第です。
滞納したり、夜中に飲んで大騒ぎする不良入居者が居座り続ける
↓
良好な入居者が迷惑行為に耐えかねて退去してしまう
という負のスパイラルに大家さんが早く気付くべきです。
定期借家であれば、このような迷惑行為をする借主とは
期間満了時に契約を終了するという選択ができるため
「期間が満了したので退去してください」と堂々と主張できるのです。
それが結果的に良好な入居者にとって安心安全な住環境が保たれるわけです。
海外を見習って、もっとこの定期借家が日本の賃貸市場に浸透するといいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
これについてはYouTubeで解説していますのでよかったら
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